コロナショック vs リーマンショック 違い

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 (以下、日経新聞より)

08年9月のリーマン・ショック、15年8月のチャイナ・ショック、18年2月のVIXショック、今回の4つについてダウ平均の推移をグラフで比較すると、リーマン・ショックの株安をコロナ・ショックがほぼそのままなぞっていることが分かる。

チャイナ・ショックとVIXショックの際は下落は株価下落が始まってから6日前後で10%前後下げ、そこで相場は反転した。リーマン・ショックと今回はそこで株価下落は止まらず、下落開始から17日後の下落率はともに20%前後に達した。

もし今回の株安の原因が、コロナウイルスの感染拡大に伴う個人消費など需要の減退やサプライチェーン(供給網)の寸断にとどまるなら、株安の深度はチャイナ・ショックやVIXショックと同程度にとどまっていた可能性が高い。時期は読めないにせよウイルスの流行はどこかで終息する。

 

それなのに株価の下げがリーマン・ショック並みに深刻なっているのは、コロナウイルスだけが今回の株安の原因ではない可能性がある。

 

原因①

景気後退(リセッション)のリスクだ。振り返れば、昨年夏にリセッションの前兆とされる米長短金利の逆転が起きたが、市場の動揺は一時的なものにとどまった。株価はほどなく切り返し、米国株はコロナ騒動が持ち上がる前までは史上最高値を連日のように更新しつづけていた。だがもしすでにリセッションを織り込んでいた米債券市場の予想が本当で、株価が間違っていたとしたら、歴史的な割高水準に押し上げられていた米国株の調整は避けられない。今回の株価下落で18倍台まで上昇していた米国株のPER(株価収益率)は押し下げられた。

 

原因②

先週3日、米連邦準備理事会(FRB)は17~18日の米連邦公開市場委員会FOMC)を待たずに0.5%の緊急利下げに踏み切った。

だが市場は「利下げではコロナウイルスによる需要と供給の落ち込みを止められない」と見透かし、株安で反応。これで一気にFRBは追い込まれた。MSは月内に0.5%、4月に0.25%の追加利下げを予想する。これで先進国でほぼ唯一1%を超えていた米国の政策金利もゼロ近辺まで低下し、マイナス金利政策を取らない限り、FRBの利下げ余地はなくなる。

 

原因③

超低金利が長年醸成してきた企業や国家の債務バブルが破裂するリスクだ。このリスクの存在は市場は認識しているが、中銀の緩和政策が続く限り、企業の債務返済が滞ることはないとタカをくくっていた。ところが9日の原油価格の急落が、その認識が甘いことを市場に思い知らせた。

原油安が企業の債務問題に飛び火するのは、米シェール関連など格付けの低い米エネルギー企業が低格付け債を発行して債務を膨らませているからだ。9日の原油価格の急落を受け、米社債市場では低格付け債の利回りが急上昇。これをみて、米国株の下げ幅も拡大した。

ただ、08年のリーマン・ショック時に比べると「米国の低格付け債の利回りは上昇したとはいえ、水準じたいはまだ抑え込まれている」

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さらに、08年は米国のサブプライムローン証券化商品や低格付けの社債を金融機関が大量に購入しており、その価格下落が金融不安に直結した。

だが今回はリーマン・ショックの際の反省から金融当局が規制や監視を強め、金融機関がそうした高リスクの融資をほとんど手掛けていない。クレジット市場が多少混乱したとしても金融不安にはつながりにくい。